ピアノを弾く黒猫
ビルを出ると、生島くんが前から歩いてきたので、止まった。
生島くんもあたしを見つけて、耳につけていたイヤホンを外した。
「優ちゃん、奈々恵さんに言ったの?」
「うん。
あたし、海外には行かないで、日本でピアノを教える先生になる。
もう、決めたことなんだ」
「優ちゃんが幸せなら、それで良いと思うよ」
「生島くんは?」
「僕はこれから、奈々恵さんに自分の気持ち伝えに行くつもり」
「そっか。
頑張ってね!」
「ありがとう優ちゃん」
ビルに入って行った生島くんを見届け、あたしは歩きだす。
公園を通り過ぎようとすると、「優ちゃん!」とあたしを呼ぶ声がした。
「由香!」
「優ちゃん、彼氏出来たんでしょ?
おめでとう!!」
「由香、ありがとう。
由香には出来ないの?」
「私はまだだよ。
でもいつか、優ちゃんたち以上に幸せになるんだから!」
「応援しているよ由香。
そういえば、ありがとうね。
あたしが生島くんに連れ去られた時、初夜に言ってくれて」
「良いよ別に!
初夜くんが行くか行かないかは、私わからなかったもの」
あたしは幸せだ。
由香というかけがえのない親友に会えて。