カレイドスコープ










車の中にはお父さんよりちょっと年上かな?ぐらいの男の人がいた






「こんばんは」







優しい声でそう挨拶された







「こ、こんばんは」






美しいオーラにかしこまってしまう




「私は川島さん専属の運転士です」



「お家はどでにございますしょうか?」







説明しづらい場所なので住所検索にしてもらった






車が動きだし疲れがどっと押し寄せてきた







「はぁ…」





ため息をついた







そういえば…







「あの、名前って…」






「すみません。いい忘れておりました。染井と申します。染井さんでいいですよ」






「あ、廣川ですお願いします」







「すみませんねぇ 高久さん休んでしまって」






高久さん?





「あの、高久さんて…?」






「家政婦の方ですよ」






入院中の…






「響君は味に厳しくてね 父親譲りだから」




染井さんはそう言って笑った






「前にも高久さんが休んだときがあって
私が代わりにご飯作ったんですが
真顔で『普通』と言われてしまい…」







染井さんはまだ笑っている




「高久さんの料理の腕前だけは一流だけど」






「響君はあなたの料理にどんな感想を言ったのですか?」





え?



でも、普通に美味しいって言ってたよね?




「えっと…『美味しい』と」





「えぇ!!??」






染井さんはびっくりしている







「そんな言葉高久さん以外の人には言わないのですが…」





染井さんは信号が赤になったタイミングで私のほうを向き






「あなたさまの料理是非食べてみたいな」







と言った













< 24 / 33 >

この作品をシェア

pagetop