悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜

いつもきっかり定時には仕事を終わらせてくれるから、余計な残業をしなくてもよくなった。

宮内には感謝している。


だから俺ができることは、こうして零を1分でも早く宮内の元に帰してやる為に時間を割くことだけだ。


「お時間にはお声をかけさせて頂きますので、ご用がなければ私は下がらせて頂きます」

「あぁ…頼む」

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ーーーーーー

ブルルル‥ブルルル
俺の携帯が鳴る。

画面を見れば宮内だ。

「もしもし…『峯岸さん』どんなご用ですか?」

『あの……零、副社長はお仕事中ですよね⁈』

「只今、会議中ですので伝言があればお伝えしておきます」

『……今朝の体調不良の件は‥2ヶ月だったと伝えて頂ければ彼もわかると思いますので、申し訳ありませんがお伝えください』

まったく、この女は秘書時代が抜けていない。副社長の婚約者として堂々としていればいいものを…

「はい…その件は伺っております。おめでとうございますでよろしいんですよね⁈」

遠回しな言い方は嫌いだ。

『……』

電話の向こうで声を殺し驚いているのがわかる。

『……ありがとうございます』

「つわりが辛くて大変でしょう…私ができることはお手伝いさせて頂きますので遠慮なくご相談ください」

『えっ…峯岸さんがですか?』

はあっ
なんだ⁈その驚きようは⁈
確かに、宮内には冷たく当たったが俺だって血の通った人間だ。

「ええ…あなたも秘書をしていたのならわかると思いますが、副社長の手を煩わせない為に私ができることはお手伝いさせて頂きますと言うことです。他意はありません」

相変わらず辛辣な言い方しかできないままだ。

『ふふふ…ありがとうございます。峯岸さんは優しいですね。つわりは辛いですが、そのせいで彼が無理に仕事を終わらせてくるのが一番辛いです。…私は大丈夫なので…彼のことお願いします』

……まったく君と言う人は。

「ええ…かしこまりました。あなたが物分かりの良い方でよかったです」

『初めて峯岸さんに褒めて頂いたような気がします』

…褒める⁈…どこをどう取ったらそんなふうに聞こえるんだ⁈

「……他にご用がないようでしたら切らせて頂いたてよろしいですか?」

あぁ…イライラする。
早く切りたい。

「『はい‥』失礼いたします」


プッンと切るとムスッして入ってきた男
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