Love nest~盲愛~


フゥ~と大きく息を吐き、プレシャスなメロディーが流れて来るその先へと足を踏み入れた。


ラウンジのスタッフに待ち合わせだと告げ、ラウンジ内を見渡す。

すると、奥のテーブルに彼の姿があった。


けれど、その光景があまりにも不可解で足が自然と止まってしまった。

私に課せられた事って………。


勇気を出してここまで来たけど、やっぱり私には無理じゃない?

あんな事、私に出来るわけがない。

だって、生まれて今日まで一度もした事が無いんだもの。


震え出す指先。

固まってしまった足。

瞬きも忘れ、固定された視線の先には、5分前に別れた彼が……。


どうしていいものか分からず、息を呑んでいると。

私に気付いた彼が、一瞬だけ私の方に視線を寄越した。


そして、彼が言った言葉通り、彼は骨ばった長い指先を首元に。

Yシャツの襟元に人差し指を滑らせ、ネクタイの結び目に指先を這わせた。

しかも、眉間に深いしわを刻みながら……。

如何にも不機嫌極まりないといった感じで。


それを確認した私は、無意識に歩き出した。

勿論、彼のもとへと……。


あまりの緊張に歩いている心地がしない。

膝が完全に笑っている。

けれど、それでも逃げる事は許されない。



カツカツとヒール音を鳴らしながら、1歩また1歩と彼へと歩み進め――――。


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