あたしはそっと月になる
「なんで……っ!!あたしなんかじゃなくて、実夕に優しくしてよ………」



あたしはやっぱり素直にはなれない。



「下田??下田は俺が部活休むの知らねぇし…。なんで?下田は関係ないだろう??」



そう言いながら、そっと開かれた傘。



「そうだ!!二人でさせばいいんだ…ほらっ」



矢口潤の腕があたしの肩を引き寄せる。



「濡れちゃうからもっとこっちまで来なよ……」



ドキっ………。



心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかって、



心配してしまうほど高鳴る鼓動。



二人で一つの傘。



矢口潤……背が高いんだ。



「こんなに濡れてんじゃん!!大塚んちまで送るよ…」



そう言って矢口潤はカバンからタオルを取り出すと、



あたしの髪や頬に付いた雨粒をそっと拭ってくれた。



あたしを見下ろすようにして、見つめる矢口潤の優しげな目。



どうしよう……。



ドキンっ……最高潮に高鳴る心臓………。



どうしよう……こんな展開……信じられないよ。

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