幻想館ーシンデレラ編ー

世上

所詮、シンデレラは童話の中の主人公。



どんな結末でも、それは架空のお話。



私は今こうしてまだ生きている。


三畳の寝床。


その日暮らしの現実


昔の友人を頼って訪ねてみるが、一文無しの私に皆冷たい。



世間はやはり狭い。


資産家の夫と別れた私に誰も同情はしない。



そう言えば、私が屋敷から出て行く時に二階の窓から覗いていたのは、娘だった。


娘の幸せを考えれば一緒に来てとは言えなかった。



それでも私は、一人で生きていかなければならない。



質素に暮らしていく事で、貯金はたまっていった。


人並みの暮らしまで戻った。



それから何年か経って、元夫は相変わらずの豪遊ぶりなのを風の噂で聞いた。



娘はどうしているだろうか・・・・・・?



その事が頭から離れなかった。


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