上司に秘密を握られちゃいました。
そう前向きに考えて頑張ることにした。

派遣社員を対象としたオリエンテーションで初めて出会ったのが、美晴だった。


彼女は派遣を色々と経験してきたけれど、ボーナスも有給もない不安定な雇用から逃れたくて、紹介予定派遣を狙ってきたのだという。

私のように、どうしても東郷百貨店がいいという訳ではなかったようだ。


ショックから始まった仕事だったけれど、裏方の仕事もそれなりに楽しかった。
文具メーカーでパソコンの前に座ったまま一日過ごすより、ずっと自分に合っていた。


私と美晴と他数人は、特に売場を固定されず忙しい売場をひたすらまわる、いわゆるヘルプ部隊となった。

だから、催事場にまわされることが多かった。


売場の社員はさすがに商品知識も豊富で、客にこの商品と指定されればすぐに案内できたし、クレームにも真摯に対応していて、感心するばかり。
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