上司に秘密を握られちゃいました。
『西里さん、おはよ。いや、こんにちはだね』
「こんにちは」
相変わらず優しい声。
休日まで会えるなんて贅沢すぎる。
『今、下まで来てるんだけど……』
「はいっ! すぐに行きます!」
しまった。
テンションが高すぎたかもしれない。
電話を切ってから後悔したけど、彼に会いたいと、はやる気持ちが抑えられない。
「真山さん、こんにちは」
「こんにちは。行こうか」
真山さんは黒いダウンコートに、細身のジーンズ。
スーツ姿しか見たことがないから、なんだか意外だ。
だけど、ラフな洋服もよく似合っている。
「ランチ、僕の知っている店でもいいかな。
正月は元旦休むだけって言ってたし。二駅向こうなんだけど」
「はい。私、あまり知らなくて……」
ランチが楽しみという女子も多い。
だけど、コスプレ一筋の私は、"食べる"より"作る"だったから、あまり知らない。