上司に秘密を握られちゃいました。

私も、幸せな気持ちで満タンだった。
彼の『一番欲しいもの』という言葉に、完全に打ちのめされてしまった。

そんなに大切に思ってくれていたなんて、泣きそうだ。


「ごめん。俺、舞い上がりすぎてるね」


真山さんは、バツの悪そうな顔をして、今度は私の顔を覗き込む。


「いえ。私も、うれしいです」


つい、本音がこぼれた。


「ありがとう。それじゃあ、今日はこれで。
今度の休み、デートしてくれる?」

「はい、もちろん」

「電話する」


真山さんは私がマンションに入るまで見送ると、帰って行った。


「ちょっと、どうしよう」


まさか、あの真山さんの彼女になれるなんて。

美晴の情報では、真山ファンは東郷の至る所にいるらしい。

だけど、彼の彼女になれるのはたったひとり。
それが私だなんて、今でも信じられない。
< 157 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop