上司に秘密を握られちゃいました。
ハンガーに掛けたまま写真を撮り、敬子にメールするとすぐに【今から行く】と返事が来た。
敬子が来たのはそれから二十分後。
「よくできてるわ。このエンブレムなんて、本物みたい。もっとお粗末なものかと思ってた」
そんなに褒められるとくすぐったい。
だけど、頑張った甲斐があったというものだ。
「ありがと。かなり頑張ったわよ」
「こんなにできるんだったら、そういう道に進めばいいのに。デザインを学ぶとか、アパレル関係?」
「ううん。就職は東郷百貨店と決めてるの」
幼いころからの夢、"エレガ"はもう叶わないけど、開店時に一列に整列し、背筋を伸ばしてお辞儀をする受付嬢には、絶対になると決めていた。
「もったいないなぁ。手先が器用なんだから、それを生かせばいいのに。だけど、制服への憧れだけじゃ、入ってみたら幻滅するかもよ」