上司に秘密を握られちゃいました。
なりふり構わず、という訳にはいかない。
公孝さんの仕事に対する情熱は、評価されるべきだ。
それを、恋人の私を引っ張ったからという理由でダメにされるのは本望ではない。
「藍華は、俺よりずっとオトナだな」
きっと彼もわかったのだろう。
目を細めて微笑み、小さくうなずいた。
社内恋愛は禁止ではない。
本部にも、売り場に奥さんのいる人もいる。
社長も実は社内恋愛だったという噂もあるくらい。
だけど、きちんと区切りをつけてからそうしたい。
もう、彼への恋愛感情を白紙にすることはできないとしても。
リアンを出ると、彼は私の家まで送ってくれた。
「おやすみ、藍華」
「おやすみなさい」
不意に私の腕を引き、優しいキスをする公孝さんと離れがたい。
「明日、家で待ってて?」
「はい」
そんな些細な約束だけで、活力が湧いてきた。