上司に秘密を握られちゃいました。
第5章

「ひどい……」


一瞬、佳乃さんの顔が頭をよぎった。

だけど、誰がやったかなんて詮索している時間はない。
ショーの開始まで一時間半しかない。


「どうする? これ、あなたが着る予定だったわよね」

「はい」


制服は肩の辺りからひじの辺りまでと、胸の下からジャケットの裾まで切られている。
到底ごまかせるような状態ではない。


どうしよう……。
私が出ないという選択肢が頭をよぎったけれど、それでは佳乃さんの思うつぼ。

それに、モデルは全員素人だ。
混乱を避けるためにも、リハーサル通りやりたい。


「中津さん。真山さんに時間をくださいと伝えてください。
必ずショーに間に合わせます」

「えっ? どうする、の?」

「必ずショーは成功させます」
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