上司に秘密を握られちゃいました。

怪獣のフィギアやままごとセット。
着せ替え人形もある。

私の手を握って離さなかった女の子が、人形めがけて走って行った。


「ひとり増えてるね」


真山さんは苦笑している。


「はい。なかなかお迎えがない子もいるようですね。
やはり、混雑する売り場で、じっと待っているのは無理だったかもしれません」


「そうだね。
迷子の放送をすると、保護されていると安心して、かえって迎えに来ない人もいるんだよ」


そんなのひどい。
子供たちはこんなに泣いているのに。


「はぁー」と思わず溜息をつくと、真山さんも「ちょっとひどいよね」とつぶやいた。


「お母さんはこちらに誘導するから、あとお願いしていい?」

「はい」


真山さんは「僕は内線252にいるから、困ったら呼んで」と慌ただしく去って行った。
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