平安絵巻





『あの…、なぜ私は松の部屋に?』


女人におそるおそる聞いた。


『お部屋についてから、お話いたしま   す。』







松の部屋は広かった。



豪華な打掛や、かわいらしい小物まで揃っている。





『ここは、松の君のお部屋にございます。
 今、松の君はお庭に行っておられます  が。』


『え?  なぜ、私が…』


松の君は、帝の妹君




14歳になられる姫…







『実は、先日帝に生け花をお見せになられ たと思います。』


『はい…
 それが、なぜ?』


『その生けられたらお花を見た松の君がど うしてもお会いしたいと…』


『そうですか。』


『もうしばらく、お待ち下さい。』



お付きの女房が出て行った。





なんて、綺麗な打掛なんだろう…






そう思っていた時




『鶴宮殿ですか?』



明るい声が聞こえた




『あ、はい!』



『着物にご興味がおありで?』


『いや、美しいなと』



ふふふ、小さく笑った。








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