だめだ、これが恋というのなら


でも。



ードンっ…


誰かが浩二くんにぶつかって、その勢いで浩二くんの手から携帯が落ちた。



『…あ…!』

浩二くんが声を出した瞬間、私の足元に転がったきた携帯を拾い上げ、偶然にも彼からの受信メールが目に入る。



“麻里とホテルに行くことになった”


文章は、たったの一行だった。



『…あ…芽衣、あのこれはきっと…』


浩二くんが必死に言い訳を考える。


私の気持ちを知ってるから、だから私が傷つかないように、必死に言い訳を考える。


でも、浩二くんが必死なら必死になるほど、彼が麻里とホテルに行く、その現実を物語っている。



『ごめんね…人の携帯は勝手に見ちゃダメだよね…』


私は携帯を浩二くんに差し出す。

浩二くんはその携帯を受け取り、そして私の顔を見つめる、



何か言いたい、でも言えない、そんな彼の気持ちがひしひしと伝わってきた。




『大丈夫だよ、私』


私がそう答え、浩二くんに背を向けた。



『ショー、見に行こう?』


私は、後ろの浩二くんをそう誘った。





『…芽衣』


その言葉とほぼ同時に、浩二くんは私を後ろから抱きしめた。



『司のこと、もう諦めれば?』


浩二くんはそう言って、私を抱きしめる、その腕の力を強める。



『…え…?』



『芽衣の泣く顔を見て、俺、そういう顔させたくない、そう思った。
 だから、司じゃなくて…俺にしなよ?』



浩二くんの言葉に、私はまた涙が溢れそうになった。



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