だめだ、これが恋というのなら


『芽衣、一回しか言わないから、聞いて?』


彼のいつになく真剣な目に私は吸い込まれ、


そして彼は口を開く。




『俺と結婚してください』


そのシンプルな、その一言が、私にはもったいない気がして。




『いや?』



でも、嬉しくて、嬉しくて、言葉にならなかった。


だから代わりに、首を横に何度も振った。




『良かった』


彼はそう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。


もうこの涙は不安の結晶じゃない、彼との幸せの涙だ。





『司……もう一回、言って?』


私は泣きながら、彼にお願いをする。



『一回って言ったろ?
 結構…俺だって恥ずかしいんだから』


彼はそう言って、耳まで赤くした姿を見せないように横を向いた。




『…じゃ…いいや…』


私がそう言うと、彼はゆっくり私の方に向き直る。




『司、私も言いたいことがあるの。
 一回しか言わないから、聞いてね?』


私の言葉に真っ赤な顔をした彼が私の顔を見つめる。


こんなにも目と目を合わせて、愛を語るのは照れくさくて恥ずかしくて、すっごい勇気がいるけど。


でも、言わなければ相手には一生伝わらない。


私はそんなのいやだから。


大切な人に大事な言葉をちゃんと伝えたいから。




『司のことが世界で一番大好き。
 私…司の隣にいてもいいですか?』


私の言葉に彼はクスッと笑った。


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