君をひたすら傷つけて

決断

「ありがと。まりえ。私もリズとまりえとの生活は楽しい。フランス語もかなりスムーズに会話することも出来るようになってきたし、ファッションの仕事も好きなの」

「なら、もう悩むことはないでしょ。リズは簡単に人の人生を変えるようなことを言う人ではないから、雅のことも雅以上に考えてくれると思う」

「そうかな？」

「そうよ。決めるのは雅。私もリズも雅の決断を尊重する」


私がリズの言うとおりにフランスにこのまま残ると決めたのは、帰国手続きをするギリギリの時になってだった。こんな時期まで悩んだのは自分の力が未知数で将来に不安もあった。


　でも、それを上回るのはこのファッションの仕事が好きだということ。リズというスタイリストは私にとって憧れの存在でもある。


「リズ。ちょっといい？」

「ん？」

　リズは今度のコレクションの使う資料の確認を自分の部屋でしているところだった。テーブルの上にはたくさんの写真と書類が並んでいる。図面も並んであるから今回はショーの仕事だろう。

「この前、リズが言ってくれたようにフランスに残ってファッションの勉強をしたいと思っているの」

「決めたの？」

「うん。随分悩んだ」

「だと思う。そう簡単に決められることではないし、一緒に仕事をしたいと思いながらも、日本にスケジュール通りに帰っても仕方ないとも思っていた」

「リズ。私にファッションのことを本格的に教えてください」
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