君をひたすら傷つけて
「アルベールがラストなら盛り上がるわね」
 
 アルベールの誕生日から半年の月日が流れていた。あの日を最後に私はアルベールの部屋には行ってない。私が怖がっているのをアルベールが感じるからか、それともアルベール自身が怖がっているのか分からない。ただ、私の心の奥底ではあの日のことが刺さった棘のように不安という波となって押し寄せてくる。

 心の中ではいつか彼を受け入れる日がくるかもしれないと思える。それはあの日から重ねた時間があるからだった。

「アルベールはラストでマリエの相手役?」
「違うわ。マリエはその前。今回は最後にスーツを着て歩くだけ」
「そうなの?」
「ええ。このコレクションからアルベールが正式に専属になるの」
「今回のコレクションって『ディー』のコレクションじゃなかった?」
「そうよ。『ディー』のコレクション」

 デザイナーである『ディー』は新進のデザイナーではあるが、老舗のブランドのチーフデザイナーになったばかり若手だった。でも、その才能はブランドの創設のデザイナーにも劣らない才能を持っていると言われている。

「凄いわ。アルベールって」
「何、他人事のように言っているの?彼は雅の彼でしょ」

 確かにアルベールとは付き合っているけど次々と階段を上っていく姿を見るとやっぱり感心する。そして、綺麗だと思う。
< 456 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop