イケメンすぎてドン引き!


「あ、吉野さんこっちくるよ! あたしも挨拶しちゃおうかな」



隣でミーちゃんが緊張しながら、もじもじとそう言った。



「よ、吉野さん、おはようございます!」


「おはよー!」



震えた声で挨拶をしたミーちゃんに、

塗りたてのニスのごとくキラキラした笑顔を返す先輩。



頬を赤らめながら、ミーちゃんはぺこりとお辞儀をしていた。



ちっ、あたしもとりあえず挨拶しとくか。



「おはようご……」


「汚物くっさ!」



さっきまで王子様のような笑顔を振りまいていた先輩は、

一瞬だけ鼻をつまみ、


怪訝そうな目、片方だけ口角を上げた顔で、


あたしにこっそりと暴言を囁いた。



――ぬぁーにぃー!!



挨拶を返してもらえてキャーと興奮しているミーちゃん。



対して、その隣にいるあたしは、

怒りの炎を片手にした聖火ランナーが体の中をかけめぐっていくことを感じた。



さっきまであんなにイケメン笑顔を振りまいていたイケメンな先輩が、

あたしにだけ見せてくれる冷たい顔にドキッ!



ではない。



ああそうだよ。

確かにくっさいローファーぶつけてしまったよ。



ええ、本当に申し訳ないことをしたと思っておりますよ。



でも、笑顔を作る表情筋も、相手を喜ばせる会話スキルも、

こんなクソみたいなあたしなんかに、使う価値ないってことですか。



別にいいんだけど。


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