とんだ勘違いから


私と課長はその様子を横目に、お先に失礼します、と部長をおいてエレベーターへ乗りこむために先へ歩いた。



部長は綺麗な女性に捕まってるみたい。




体にピッタリとしたワンピースを着ている女性はヒールもすごく高くてここから見ても大人の女のオーラが溢れ出ている。


私は髪をセットしててもあんな大人の女を感じさせる要素が全くない。


私が横目で見ているのに気付いた課長が


「あの人どこかで見たことあるんだけどな~。


誰だったかな?」


なんて思考してるとエレベーターがやってきて私達は乗りこんだ。




部長は私達より数分遅れて1課にやってきてそのまま仕事を始めていた。



私は何度も部長のことを見たけどふとした時に考え込んでいる姿を見てあの女性と何かあったんだということは一目瞭然。



でも、他のスタッフには何も気付かれてない。

いつもの部長だ。








今日はお昼が秘書課と一緒になれそうだったので切り上げて近くのカフェで待ち合わせにした。




でも行くんじゃなかった。


気を紛らわせにいくつもりだったのに部長とあの女性のツーショットを見ることになったから...



もちろん話す話題は今窓際に座っている綺麗な女性と部長のこと。



「やっぱり前田部長いい人いたんだね。

せっかくまことお似合いだって思ってたのに!」

と言ってくれたのは私の先輩達。

私は、あははって硬い笑いしかできない。



二人はさっさとカフェを後にした。

伝票を持った部長には全く笑顔がない。


まるで金曜日のホルモン屋の時みたいな顔。


お昼休み終わって1課に戻るとすでに部長は戻っていた。


少しホッとする、あの女性とあのあと別れたってことだろうから。



まだ課にみんなが戻ってきていないから私は思い切って部長の元へ行った。



「あの、部長?


お話が。」


と切り出して顔を覗くと部長の疲れた顔。


「あっ、何だ?」


私は


「先ほどの女性のことです。えっと、あのー、」


どう切り出していいかわからないで立ちすくんでいる私に部長が立ち上がって抱きしめてきた。



顔が私の首元に落ちてきて


「俺が好きなのはまこだけだ。

お前も俺のこと好きだろ?」

と少し弱気な言葉をかけてくるから


「はい、部長が好きです。ここにいますから。」


そう言うとギューッと抱きしめてきて


「ありがと。

お前が好きだ。」


そう耳元で囁かれて私は真っ赤になっていたと思う。



それから



「ちょっと出てくるから、仕事そのまま続けておいてくれ。」




というと抱きしめる手が離れてかばんを持った部長が1課から出ていった。
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