我 、君ヲ愛ス…っ⁉︎

『公美様……私を貴女の心に置いて頂けませんか』



突然、龍泉はそう言いだした。



『私には、如何しても守らなければならぬ秘事が御座います』



龍泉は、真摯だった。



目を逸らすことはせず、真に迫る勢いで私に訴える。




『……公美様は何の関係もありません。しかし、貴女が私を拒めば……今度はいつ私の存在を“見える”人が現れるか分からないのです』



彼の目の淵が紅くなっていた。



余程力を入れているのか、握りしめた拳は微かに震えて入る。



『ーーお願いします』



龍泉は、そう言って深く頭を下げた。



私は堪らなくなって、ベットから降りると龍泉の近くでしゃがみ込む。



「……顔を、上げてください」



『……』



それでも、龍泉は頑なに頭を下げ続ける。



「やめて……そんなことしたって、私は」



正直、龍泉の真剣な頼みに、“はい、いいですよ”と心良く二つ返事を返すほど、私は勇者ではない。



龍泉は生者ではない。



その事実だけで、頭が真っ白になる。



「……私は」



ーー出て行って欲しい。



「……」



だけど、言葉にはならなかった。



代わりに出たのは、小さな小さなため息だけ。



どうしても、龍泉の浮かべたあの悲しい笑顔が、私の心を締め付ける。



そして、気がつけば



私は首を縦に振っていた。




< 17 / 18 >

この作品をシェア

pagetop