桜ノ華



颯介は優しい。

結婚を断る理由なんてないほどの相手だと、頭では思う。

会うたび何かをプレゼントしてくれるし、
連れて行ってくれる場所も、くれた物も、食べた物も、
はずれは一度だってなかった。


「…できれば、進学したいです」

「そうなんだ! うん! いいと思う! 桜ちゃんは成績も優秀だって聞くし!

何の勉強がしたいの?」

「言語か文学がいいです。…言語でしたら、颯介さんのお役にも立てますね」


微笑むと、颯介の顔が赤く染まった。



―好きになれそう。



そう思うと同時に、啓志の言葉が頭をよぎる。

よぎるけれど、信じることはできなくて。







―素敵な夢でした
 だけど戻されたのは現なのです



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