桜ノ華
「啓志さん…」
緩やかに背を撫でてみると、抱き締められている腕の力が強まった。
「…明日から、藤堂(とうどう)に仕事を手伝わせようと思う」
藤堂とは、今日集めた後輩たちの中でも群を抜いて優秀で、
尚且つ啓志に心酔している男子生徒。
「はい。いいご選択だと思います」
「君にそう言われると自信が出る」
すう、と啓志が息を吸い込んだのがわかる。
「…君の香りは落ちつくな」
「ふふ、よかったです」
「…出会えて、よかった」
不思議に思った。
何で急にそんなことを言うのだろうと。
啓志なりに出した答えの、苦渋の選択の末の言葉だとも知らずに。
「私もそう思います。啓志さん」