あなたと恋の始め方①
「まだ、来ないですよ。だって、そんなに早く来れたら吃驚です。小林さんのマンションからここまでかなり渋滞していると思います。それに駐車場からもそんなに空いてないだろうし」


「賭けようか?10分以内に来たら、蒼空と帰る。10分を過ぎたら俺と一緒に帰る」


 折戸さんは口をもう一度グラスに付ける。琥珀色の液体はゆっくりと折戸さんの口に消えていく。そして、カランと丸い氷がグラスの中で音を立てた。本当に何を考えているのだろう?さっき小林さんにこの店を教えたのは折戸さんだし、その時に小林さんが迎えに来ることを知っている。折戸さんと帰ったら、小林さんを迎えに来てくれるように頼んだ意味がない。



「そんなに早く来れないです。この時間は渋滞しますし」


「そうかな。じゃあ、その程度の思いってことじゃないの?じゃあ、ハンデをあげようかな」


 折戸さんは携帯を取り出すと画面を指で撫でるように滑らした。そして、ニッコリと笑う。何かメールでもしたのだろう。でも、折戸さんは少し画面を見つめた後にカウンターに携帯を置いたから小林さんからの返信はないようだった。


「ハンデってなんですか?」


「秘密。さ、蒼空が来るまでゆっくりしよう。俺はこの残ったウィスキーを飲みたいし」


 そう言うと折戸さんはまたグラスに口を付けたのだった。


 私は折戸さんに自分の気持ちを伝えないといけない。でも、どうしたら自分の気持ちを伝えることが出来るのだろう?自分でもまだ分かりかねる気持ちを素直に言葉にするのは難しい。
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