あなたと恋の始め方①
 折戸さんはドアを開けると私の方を向いてニッコリと笑った。その顔は満足そうでとっても安心しきったような顔をしている。その綺麗な顔にドキッとしてしまう。恋心はないけど、やはり折戸さんにはドキドキしてしまうのは止まらない。


「賭けは美羽ちゃんの勝ちだよ。蒼空が間に合った」


「え?」


「蒼空が美羽ちゃんを迎えに来た」


 折戸さんが開けてくれたドアの先には、明らかに走ってきたと思われる小林さんが立っていた。肩を上下させながら折戸さんと私を見つめている。少し肌寒い時期なのに、額からは汗が流れている。そして、それを無造作に拭うとニッコリと笑った。


「間に合った~」

「ああ。随分走ったのか?」


 折戸さんはクスクス笑いながら小林さんの方を見つめていた。小林さんはというとかなり本気で走ったらしく、少し経った今でもまだ息が整わない。陸上選手がレースの後の状態に似ている。でも、小林さんをここまで走らせるようなハンデってなんなのだろう?後から小林さんに聞いたら教えてくれるだろうか?


「当たり前でしょ。冗談にしても性質が悪い」


「でも、冗談でもないよ」



 そういうと、折戸さんはニッコリと笑って私の頭にポンと手を乗せた。その優しい笑顔に私は見とれてしまった。そして、優しい声が落ちてきた。


「じゃあ。お兄さんは帰るから、後は蒼空に送って貰いなさい」
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