あなたと恋の始め方①
 折戸さんは真っ直ぐに自分の気持ちを言葉に乗せてくる。素直に零された言葉はあまり人の感情の機微に敏感ではない私にでも分かるくらいに真っ直ぐだった。それに比べて私は中々自分の気持ちを言葉にすることは苦手だった。自分の言葉で相手がどんな風に思うのかと思うと気持ちを言葉にすることがこんなに怖かった。


 でも、それを折戸さんは何気なくやってしまう。


 最初に会った時から折戸さんは真っ直ぐで綺麗なまま。そういうところは本当に憧れる。だからと言って私は自分の気持ちを素直に言うことが怖かった。もしも、小林さんに自分の気持ちを伝えることで今の関係が終わってしまうのが嫌だった。


 今の関係はとっても居心地がいい。傍に居るだけで幸せだと思う。でも、もし、私が小林さんの事を好きだと言ったなら…小林さんはどう思うだろう。これが空港で告白されたばかりの時だったらもしかしたら思いを返してくれたかもしれない。


 でも、もう既に一年以上の年月が流れている。その間に小林さんの気持ちが変わっていても可笑しくない。小林さんが私に持ってくれている思いが、単なる好意であって、恋ではないなら私はどうしたらいいのだろう。



 そんなことを考えているうちに水曜日になってしまっていた。


 あれから小林さんは忙しく一度も会っていない。私の気持ちは思いっきりユラユラ揺れていた。

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