不幸ネット
「おはよ」

 そこへ上沼が姿を現した。

 良かった……

 今日は何も問題なかったみたい。

 時刻も普段通りだ。

 何だか少しがっかりしたような安心したような、何とも言えない感情が込み上げる。

 だけど、今日も上沼は機嫌が悪そうだった。

 苛めが始まってから、私は上沼の事を注意深く観察するようになっていた。

 それは一種の防衛本能。

 辛く当たられる事に変わりはないといっても、できる事ならそれは最小限に抑えたい。

 なので、書類の件など、業務上話しかけざるを得ない時はよほど急ぎのものでない限り、少しでも機嫌の良さそうな時を見計らって行っていた。

 だから何となく分かる。

 表面上は普段通りを装っていても、些細な声のトーンや表情で大体の機嫌が分かるまでになっていた。

 今日の上沼は、私が思うに"駄目な日"だ。
< 74 / 228 >

この作品をシェア

pagetop