溺愛宣誓


「ともかく…僕はこんな男を認めないぞぉ…。モーゼが海を真っ二つに割ったが如く、二人の仲を切り裂くべく……居座ってやる……」

「はぁ゛ぁぁぁ!?例え女装好きの病みシスコンだろうと俺を差し置いてカノと一緒に住むなんてそんな羨ましい事俺が認める訳――――」

「……僕にそんな口…聞いていいのかなぁ~……僕をこじらすと後々色々とことん厄介な事に……ならないかなぁ……」

「ぐ、……ぐぬぬぬううううううう。ステ゛キな゛お兄゛様゛だと思゛っておりま゛すとも゛っ。」

「ぅおお、小姑が勝利した。てか、あまりにも心に無い事を無理矢理口にした所為で今こそ死にそうになっちゃってるが、大丈夫かい彼氏君っ!」


激しい論戦に飛び込む事も出来ずひたすら聞き役に徹していた私もそこへ来て我に返る。


うーん……。

お兄ちゃんの事は嫌いじゃないけど、一緒に住むのはちょっとヤかなぁ…。

だって、織田さんと一緒に居る時間が減っちゃうもの。


ああでも、それはそうと………


「こんな失礼なお兄ちゃんなのに、織田さん、優しい……。やっぱり織田さんって人間の出来た器の大きいステキな人。」


私が思わずうっとり本音を洩らせば、織田さんがニコリと笑顔を浮かべた。


「愛するカノの家族だからね。カノが大切にしている物を彼氏の俺が大切にするのは当然だろう?」

「…織田さん…っ。」


愛情溢れるそのセリフと、相変わらずの顔の近さに顔が熱くなる。


「いやいや、さっきっから彼ちょいちょい切れて失礼連発してんじゃない。てか、その優しさ、将を射止めんとするなば先ず馬から的な思惑見え見えですが?」


と、お巡りさんが愕然と突っ込む。

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