溺愛宣誓






朝、今日はちょっと早く起きて会社に行く前に家へ帰る。

織田さんは送っていくと言うけれど、朝だし、これからお仕事なんだし、丁寧に辞退した。


「でもやっぱり終電のがして始発で帰るうだつの上がらないサラリーマンに絡まれたり、気まぐれな宇宙人に連れ去られたり、エアポケットに迷い込むかもしれない。心配だ。」


玄関まで見送りに着いてきた織田さんはまだブツブツ言っている。

織田さんの愛をひしひし感じてキュンと胸が鳴る。


でも大丈夫です。

(一つ目のはともかく)アリエナイ心配ばかりですから。



「あ!そうだ……あの、これ!」


玄関を開けようとしてある事を思い出した私は鞄からある物を取り出し織田さんに差し出した。

織田さんがきょとんと眼を見開く。


「……殺虫剤?」


そう。お出かけ時にセットして、煙をもくもく出して室内の虫を撃退するアレだ。


「はいっ。織田さんの家にお泊りした後、私の胸元とかによく赤い痕があって、ひょっとしたらダニとかじゃないかと思って…。」

「………………。」

「あ。今日は織田さんの頬も何だか赤く腫れてるみたい……」

「っっっ」


がしっと私の手が織田さんの手に包まれた。


「お、俺はっ、虫の一匹ぐらいいてもイイと思うぞ!というか、虫といえども大切な命…………ダカラ殺サナイデ下サイ。オネガイ。」

「は?…はい」



良く分からないけど、虫にさえ優しい織田さんに私の胸はきゅんきゅんと高鳴るのだった。




::::::::::::【とある煩悩虫記念日:end】



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