東京血風録

3 復活の儀






 その後の遥がどうなったかと申すと、その場に座ったまま動けなくなったのを、校舎内を捜しまくって屋上まで来た、藤堂飛鳥によって文字通り救出された。
 飛鳥の方も相当なダメージだったろうに、遥を背負ってタクシーに乗せて事務所まで届けたのだ、大した男よ。


 学園内での騒動の後、浄霊コーディネーター・加倉井荘司が校舎にやってきて、現場見聞を行ったそうだ。
 渡り廊下の崩落事故現場を見て、阿鼻叫喚の叫びをあげたそうだが、王道遥による鬼の棲む男(鬼児に操られた男)討伐は、成功との見込みがなされた。




 そして、現在・・・。



 王道遥は、くの字に折れた黒檀の木刀・
儂・伊號丸を抱いたまま、呆けたようになっていた。
 丸4日。

 何故、木刀を抱くようなそんな真似をしてるのか?って。そりゃ、会話が出来るのじゃが、遥の体と儂とが接していなければならないからに他ならない。
 遥は、寂しがり屋なのだ。
 儂で良ければ、傍にいて話し相手になってやるわい。








 そうこうしていると、遥がおもむろに、
(質問がある)
と、心の声で訊いてきた。

(僕の言うことを聞いて、それが可能なのかどうなのか教えてほしいんだ。)
 遥の声は真面目そのものだ。
(伊號丸は剣鬼だろ。剣や刀の守り神というか憑き鬼というか、守護霊みたいなもんだろ?その憑いている剣や刀が折れたり壊れたりしたら、剣鬼はどうなるんだい?それなんだけど、直す、いや・・・治すか、そんなこと出来るのかい?金属なら打ち直すなんてことも可能なんだろうけど、木製の物が元通りになるなんてことが有り得るのかい?剣鬼の力でさ)

 う~~ん、なんてことを考えておったのじゃ。
 答えてやらねばの。

 長考の後、
(まず、剣鬼の存在は、剣が折れたからといっても亡くなるものではない。そこに留まるか、出ていくかはその剣鬼の自由じゃよ。また新しい剣を探すことになるがの。

治す問題じゃが、1つだけ方法はあるんじゃよ。これは、剣鬼と剣の所有者の重要な関係性でもあるんじゃが・・・。

いや、これはお勧めしかねるかの。


でも、遥殿が望むのであれば・・・。



いや、でも、しかし・・・。)





(歯切れが悪いね。あんまり良くないことなんだね。どちらにしても、魍魎ハンターを続けるにしろ、剣士然にしろ、伊號丸なしに考えられないんだ。折れたままじゃ、大いに困るんだ、僕が。方法があるんだったら、是非にでもお願いしたい)

 
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