溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
けれど、彼は代わりに落ち着いた様子で目と声で威嚇する。


「彼女の荷物を聞いているんです。はやく」


ぽかんとする私の背中で、慌て甲斐が荷物を纏めてくれた。

「あの、七帆の知り合いですか?」

甲斐が嘘ん臭そうに彼に尋ねながら、私のキャリーケースを渡す。
すると、彼は極上に笑って頷く。


「君には勿体ない、俺の最愛の婚約者です」

え……。

目を見開く私に、彼はまた跪いてお茶目にウインクする。
「荷物、これだけで間違いない?」

「あ、はい。多分」

「じゃあ、そんな恰好だけど、もう時間が無いから着替えさせてやれない。だから、――失礼するよ」

そう彼が言った後、彼は私を抱きあげた。

「ええ?」

「動かないで。出港に間に合わないよ」

そのまま、エレベータの前で私のキャリーケースを置くと下へのボタンを押した。
「首に抱きついて、そのセクシーな前を隠していて」

「うあわ」

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