溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
いきなり重い話をするのかと思ったけれど、ジェイドさんは晴れ晴れした顔をしていた。本人は、暗い話だと思っていない。辛い過去を乗り越えたからこそ話せる話でもあるかと思う。

「で、俺は土地を貸してくれていた本家の人たちが、本当の家族の様に俺を迎え入れてくれた。イギリスでワイン用の果実を栽培する土地を所有し、王族ご用達のワインを作っていて、侯爵の位も貰っている本当の英国紳士の家に」
「じゃあ、日本の弟さんに会いに行くって」

「ああ。血は繋がっていない。でも一緒に日本語を習ったり、勉強したり、本当の弟のように育った大切な家族だ。だから、結婚式も参加したかったんだが、仕事で何カ月も海に出てしまうとどうしても調整が取れなくて」

はは、と苦笑いを浮かべる姿は、少しだけ寂しそうだった。
そんな複雑な事情があっても、結婚式には堂々と兄として参加したかったのだと答えるジェイドさんは、いつものちょっと偉そうな自信満々な姿はなかった。
「もっと聞きたい」
< 81 / 244 >

この作品をシェア

pagetop