大阪セカンドシンデレラ



「智君…。」



薄暗い空。



「ホンマ、感謝しなければならないのは私の方だよ。」



目の前でそびえる通天閣に光が灯り、ネオンが輝いている。



「早く良くなってや。待ってるからな。」



空に向かって呟くと、携帯が震えている事に気が付いた。


画面にはゆかちゃんのお店の番号。



「そう言えば…。」



さっきも着信があったな。



「もしもし。」



『美紀か?』



「ゆかちゃんが携帯鳴らすなんて珍しい。」



『今どこにおる?』



「いつもの公園やで。」



『ちょっと今から店来れるか?』



「別に大丈夫やけど。」



『急で悪いけど待ってるわ。』



「何かあったん?」



『来たら分かる。』



「あ、切れた。」



スケッチブックを閉じ鞄に片付ける。


心の中はまだ智君が入院した悲しみと感謝の余韻が残っている。


ゆかちゃん…、何やろ?



< 58 / 139 >

この作品をシェア

pagetop