怪盗ダイアモンド

また音遠side





【また音遠side】

―――コッ、コッ、コッ


開いたドアから中へ入ると、迷わずに真っ直ぐ進んだ。

右を見れば、ホルマリン漬けの大小様々な謎の生命体がたくさん。

左を見れば、目がチカチカしそうな数式がビッシリ書かれた紙の山。

理科室と博物館と科学準備室をごちゃ混ぜにしたような、ものが沢山ある広い広い地下室。

太陽の光が入らないから、窓は一つもない。この部屋を照らすのは、ホルマリン漬け達の中身を照らすライトと、奥にある机に乗ったライトスタンドだけ。

そんな中、僕は僕を呼び出した張本人を探す。

ものがいっぱいでここでも走れないから、転がったフラスコやファイルを踏まないよう、ゆっくりと跨ぎながら進んだ。

まぁ、探すって言っても、大体相場は決まってるけどね。

視線を部屋の奥に向けると、机の前で山積みになった毛布が不自然にモゴモゴと動くのが見えた。

「またそこか……まぁ、ちゃんと生きてて良かった」

独り言が、ボワンと部屋に響く。

僕は机にある僅かなスペースに缶のココアをコトンと置き、バインダーで動く毛布の山をパコンと引っぱたいた。

「ほら、ココア持ってきたぞ。おーい、……おーきーろ!」

「ん……んむぅ……」

「コラコラコラ!二度寝すんな!起きろ!」

毛布の山が崩れ、中から寝ぼけ顔が姿を現した。

茶色い髪で、耳の下あたりを丸いゴムで結んだヘアスタイルの女の子。前に会った時より、顔色が悪くて髪も乱れてる。

「ほら、頼まれた書類。あとどうせろくに食事も取ってないだろうから、ココア持ってきてやったよ。せめて糖分取りな」

「……谢谢」

「なんで中国語?!」

ダメだ。壊れてる。

「……さっき、『アリス』に会ってきたよ」

彼女の耳がぴくりと動き、数秒後、むくりと体を起こした。

「『アリス』と?!」

よっしゃ、興味ありそうな話題を持ってきて起こす作戦、成功!

「なんか、いたって普通の娘だったよ?お前が言ってたような感じと違った」

「いや、本人も気づいてないんだろうけどね、潜在的な能力は半端ないはずだよ」

「え~……マジでぇ?」

「ま、信じないなら信じないで良いけど」

缶を開け、ココアを一口飲むと、彼女は立ち上が……ろうとして、転んだ。

ドサドサと、机に積まれた書類が雪崩を起こして床に落ちる。

「……大丈夫か?」

「……」

挫けてしまったのか、また寝てしまったのか、そのまま動かない。

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