怪盗ダイアモンド


「さーて、これで良し、と。まぁ後は若いもん同士でどうにかなんだろ」

「いや、私達もまだ若いからね?同い年だからね?」

満足気にドアを閉めた阿弓に、すかさずツッコミを入れる。

阿弓と横並びで階段を降り、教室へ向かった。

昼休みが終わるまで、あと十五分ほど。

それまでにどうにかなって欲しいけど……亜希乃、ちゃんと喋れるかな……

「あ、そーだ、アゲハ嬢よォ」

何やらニヤニヤと笑みを浮かべる阿弓。この前の母さんを思い出させる顔だ。

ってことは、もしかして……

「とうとうお前だけになっちゃったね。フリーなの」

やっぱり彼氏の有無の話……って!

「あっ!?」

そ、そうだった!

阿弓は遠距離恋愛中の彼氏がいるし、亜希乃はたった今告白の返事をしようとしている。

私だけだ、彼氏がいないの!

「はっはーwww!!ヤバいねアゲハ嬢〜〜wwwww出た〜〜、独身予備軍奴〜〜〜〜wwwwww」

ううっ、阿弓に言われるとなんか腹立つ……

三人の中で一番三次元(と書いてリアル)の恋愛と縁がなさそうな彼氏持ちのこいつに笑われるとは……

「うちの兄さん達紹介しようか?って言っても、六人のうち既婚者二人だから、四人しか選択肢ないけどよーwwwww」

「……い、いるし!彼氏くらい!」

「……え?」

はっ、しまった!ついヤケになって嘘ついちゃった……

「ま、マジか、アゲハ嬢……!なーんだ、そうなら早く教えてよー!!私一人で爆笑して、アホみたいじゃん!」

阿弓がバシバシと私の肩を叩く。

ど、どうしよう……もう今更嘘だなんて言えない空気……

しょうがない。もうとりあえずその場しのぎの嘘を突き通そう。

頭の中に音遠くんの姿を思い浮かべる。

モデルがいた方が、嘘に矛盾が生じないからね。

「母さんの知り合いの子供なんだけど、超イケメンで、頭良くて、優しいんだから!」

よし、これなら一回しか会ったことない人の事だとは思わないでしょ!

「へぇー……そんな人がいたとは……やるな、アゲハ嬢……」

ふふんっ、なんだか勝った気分!
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