怪盗ダイアモンド


「……ヒノミヤ?」

一人だけ、阿弓が怪訝そうな顔をする。

けどそれは一瞬で、すぐに笑顔を作って挨拶をした。

「ねぇ、音遠くんって言ったね。君、妹はいる?」

「え?妹?」

あ。


『蝶羽ちゃんごめん、妹から緊急の電話が来た!僕帰るね!』


妹という単語で、あの時の言葉が頭の中でフラッシュバックする。

今まで忘れかけてたけど、ちょっとまた気になり始めた。

阿弓に心当たりがあるなら、本当にいるのかな……

「いや、私の知り合いにも『ヒノミヤ』って苗字の人がいるから、兄妹か何かかなって」

『ヒノミヤ』ってあんまりいない苗字だと思うけど……



「多分、たまたま同じ苗字の人だと思うよ?
. . . . . . . . . . . .
僕にきょうだいはいないし」



「え?」

嘘。

じゃ、あの時の発言は何?

「そっか。まあそんな偶然なんてそうそう無いよね!私は榊 阿弓。今日はよろしくー」

「よろしくね」

顔を上げた音遠くんと、視線が合った。

「今日は楽しめそうだね、このメンバーなら。呼んでくれてありがと」

ニッコリと微笑む音遠くん。私と初めて会った時の笑顔と、同じ顔……なのに。

なんとなく、背後に黒い影が迫ってるように見えて、私はうまく笑えなかった。























< 44 / 80 >

この作品をシェア

pagetop