怪盗ダイアモンド








『怪盗』になってから次の日の朝。

「はあ~……」

「おはよー……どしたの蝶羽?元気無いみたいだけど」

「あ~、亜希乃おはよ……大丈夫、ちょっと寝不足なだけ」

 






 








あのあと、母さんから徹夜で怪盗の極意を隅から隅まで叩き込まれた。

『いつエインセルを盗めるチャンスが来るか分かんないんだから!今から特訓するわよ!』

『えええええ?!』

『明日にでも見つかるかもしれないんだからね!飛翔が死んでも良いの?』

『〜~~っ!!!』

ここで兄さんの名前を出すのは卑怯だ!断れる訳がない!

そして、もし見つかった時の逃げ方、観客を楽しませるキザっぽいセリフ、変装の仕方と変装時の声の変え方……等等、『それ、必要?!』と思えるようなものまで一晩で全部覚えさせられた。


















眠くてこれから授業受けられる自信がないよ……

瞼が重くて、もう無理……

私は机に突っ伏した。

「アッキー、アゲハ嬢!おはよすー!……あれ?アゲハ嬢?どしたの?」

「あー、阿弓……おはよすー」

ちなみに阿弓は私のことを『アゲハチョウ』と引っ掛けて『アゲハ嬢』と呼び、亜希乃を『アッキー』と呼んでる。

「蝶羽、寝不足で眠いんだって」

「ふぅーん?」

阿弓のセリフが、何か隠しているようにヘラヘラしてる。

「じゃぁ、眠気覚ましに良い話聞く?」

「良い話?」

目だけちろっと阿弓の方へ向けると、彼女は鞄から何やらチラシと三枚のチケットを取り出した。

「じゃんじゃじゃーん!『世界最大のルビー、血の口紅(ブラッドルージュ)』が県立博物館で展示されるんだってよ!これチラシと入場チケット!」

「あ、それ知ってる!行きたいなって思ってたんだー!」

「ちぇっ、アッキーはもう知ってんのか。二人とも脅かそうと思ってたのに」

ルビーと聞いて、私の耳がぴくりと反応する。

もしかしたら、エインセルかもしれない!!

私はガバッと顔を上げた。

「おー、おきたー」

「アゲハ嬢って雑貨屋の娘だけあってさ、小物とかアクセとか作るの得意だし、キラキラしたもの好きじゃん?だからこーゆーの興味あったり、参考になるかなーって思ってさ!」

「え?『血の口紅(ブラッドルージュ)』ってアクセなの?」

「ちょっと派手目なブローチなんだよ。ほら、ここに写真載ってる」

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