君と花を愛でながら

「ご飯目の前にぼーっとしてるからでしょ」

「すみませんすぐ食べます!」



やっと頬を解放してもらって、今日の賄いのお豆腐ハンバーグに慌てて箸を付けた。
少し淡い色のハンバーグの横には、彩り可愛いポテトサラダが付いている。



「……片山さん、ほんとになんでも作れますよね。パティシエさんなのに」

「料理は好きだしね、簡単だよこんなの」



漸く私が食べ始めたことに気を良くしたのか、頬杖をついてニコニコ笑っていた。
いつのまにか片山さんは食べ終わっていたらしい。



「綾ちゃん、明日ね」

「はい?」



突然振られた話に、何の気なしに尋ね返す。
すっかり油断していた。



「定休日でしょ。明日こそ向日葵畑行こうよ」



まさか忘れてないよね?
そう言いたげな、ちょっと怖い笑顔だった。



「あ……えっと」


つい、ちらっと厨房の外、カウンターの見える方へ目を向けてしまうのはもう癖みたいなものだ。


そう、ただの癖で。
別に深い意味はない……もん。


なんて誰にしたって意味のない強がりが頭に浮かんで、結局向日葵畑とは関係ない方へ思考回路は流れてしまう。


そんな私を知ってか知らずか、片山さんが眉尻を下げて少し寂しそうに笑った。



「もう、デートなんて思わなくていいからさ」
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