君と花を愛でながら
その日から数日後、静さんと聡さんが二人そろって顔を出してくれて、結婚することになったと報告してくれた。


静さんが私にこっそり耳打ちをした言葉。



「最後の賭けだったの、あのバラを見て気づいてくれるかどうか。ありがとうね、綾ちゃん」



私の言葉がヒントになって上手くまとまったって考えるとすごく嬉しいけど、反面ひやりともする。


だってあの時一瀬さんが促してくれなかったら、私は何も言わずにそのまま見過ごしてしまったわけで……そうしたら二人はもうわかり合うことはなかったかもしれない。


今までより少し近い距離で寄り添って歩く二人の背中と、静さんの幸せそうな横顔を見て、ふと思う。


私は、二人が初めてお店に来たときから二人の姿に憧れて、だから聡さんが遊び人だと分かった後でも別れて欲しくなかったのかもしれない。


そんな恋に恋したような私の頬を、ぺちぺちと叩いて起こそうとする人がいる。



「好きだよ」



と、只管ストレートな言葉と態度で私の手を引こうとするその人に、どうしたらいいかわからなくなって。
逸らした先の目線には、いつも別の人がいる。


私には難易度高めの、嵐の予感、です。







『ピンクのバラの花束を』  END

※エピソード、プロット案提供
 Aiki様
 美森萠様

ありがとうございました!
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