純情喫茶―恋する喫茶店―
「誰を?」

谷木は聞き返した。

「――私が喫茶店を経営しているのは、母を探すためなんです…」

「お母さんを探すため?」

そう聞き返した谷木に、
「幼い頃に、家を出て行った母を探すためです」

玲奈は答えた。

「それが理由なのか?」

そう言った谷木に、玲奈は首を縦に振ってうなずいた。

「私と笙が幼い頃に、突然母が家を出ました。

父は母が突然出て行ったことをとても心配して、警察に届けを出すくらいでした。

でも、母は見つかりませんでした。

父は病気で亡くなるまで、ずっと母の心配をしていました」

谷木が黙って玲奈の話に耳を傾けていた。
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