あたしの意地悪な弟
 教室に入ると笑顔で綾乃が出迎えてくれた。

 「凛ちゃんおかえりー」

 「綾乃ただいま~今日生徒会の手伝い行けなくなっちゃったー」

 「また、何か頼まれたの?」

 「うん、資料室の掃除してこいってさーはぁ・・・」

 あたしは気だるげに言った。

 「残念だね、夕日先輩と会えなくて」

 「うん・・・」

 「それってもしかして勇輝君と一緒にやるの?」

 綾乃は少しニヤニヤしながら聞いてきた。

 「そうだけど、どうしたの?」

 「ちょっとねー♪」

 綾乃のなんか楽しそう。

 「あ、勇輝君!そういえばこないだ貸してくれた本返したいんだけどちょっといいかな?」

 綾乃は笑顔で勇輝に言った。

 「・・・・わかった」

 勇輝は少し間を空け返事をした。その時の勇輝の顔は少し強ばっていた気がした。

 その返事を聞き、綾乃は廊下に向かい、勇輝はその後を追った。

 「あからさまだなぁ」

 利久斗はいつもより低めな声で言った。

 「利久斗?」

 「ん?なになにー?」

 「いや、なになにーじゃなくて、なにがあからさまなの?」

 「んーこんなに分かりやすいのになんで凛ちゃんは分かんないんだろうってこと」

 「?」

 あたしは利久斗の言葉の意味が全然分からなかった。

 「つまり、凛ちゃんは鈍感なおバカさんだってことだよ」

 「え?あんたはあたしに喧嘩売ってるの?」

 あたしの顔が引きつる。

 「まぁまぁ、俺としては凛ちゃんはそのままでいてくれればいいよー。その方が俺も好都合だしね☆」

 ますますこいつが何を言っているか分からなくなってきた。
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