雷獣

「ﾊﾞﾀﾝ。」

ドアが閉まる音を聞いて風翔が話し出す。

「和真さんの所に連れて行くの？」

「あぁ」

「でも、和真さん余計な事言わないかな？あの日の事知ってるんでしょ？」

「あの人命に関しては厳しい人だからあの日の事を知ってて遥香を連れてくには
俺もさんせーしないけど」

3人のやりとりを黙って聞いていた風翔と岳人が話し出す。

「まぁ俺も行くから」
そう夏惟が言う。

「さっき話してて俺と夏惟が目を合わせた時、いい反応じゃないのを
感じ取って遥香が引き下がった。多分まだ遠慮してるしもともと空気に敏感なはるだから
これからはるが遠慮する場面って出てくる。

でもそれじゃいつになっても俺達とはるの心の距離は変わらない。
あいつが記憶をすべて思い出さなきゃ。

だから身の危険だとかじゃない限り俺達が気を付けてかわせる事なら
はるが望むなら連れて行く。」


「「.........。」」

「拓哉がそこまで言うなら分かった。」
「俺はそう言われてもまだ納得しないけどな。」

微妙な空気が部屋を包む中玄関の扉が開き遥香の声が聞こえた。

「お待たせ～」
そう言い部屋に入ってきた遥香。

「じゃ、行こうか。」
席を立つ夏惟、続けて部屋を出ようとする拓哉。
動かない風翔と岳人を見て遥香が声をかける。

「2人は行かないの？」
2人は不穏な空気は出さずに
「昨日かなり呑んだし僕は今日はゆっくりしてるね」
「俺も頭痛いからパス。」

「そっか、じゃあゆっくり休んでね。行ってきます～」