初雪が降るころに・・・

現在

雪乃視点

「ん…ぅ…」

ゆっくりと意識が浮上し、ようやく体を包むものを確認する。

障子越しに感じる朝日。

それに気づき、やっと自分が目覚めたことに気付いた。

「ん…朝、ね…」

ゆっくりと上半身だけを起こし、自身の白く長い髪に指を絡ませ、手櫛で髪をといた。

一通りとき終えると、また、ゆっくりとした動作で着替えを始める。

あの村にいた頃には、着物なんて高価なものは着なかった。

しかし、あの方に拾われて、約10年。

あの頃から着ているからだいぶ慣れてきた。

…まだ、柔らかい布団で眠ることにはなれないのだけれど

「…雪乃」

控え目に掛けられた声。

「…竹島先生」

「仕事だ」

その言葉と共に部屋に入ってきた1枚の紙。

少し年をとっているおじさんと言っていいくらいの男の顔が描かれた紙。

「いいな…7日以内に『殺れ』」

感情のない無機質な声

「…はい」

それに応える私の無機質な声が部屋に響く。

私の仕事は、先生に言われたとおりに人を殺すこと。

だって、先生の言うことは、正しいもの。

そう…信じてるの…

これが、間違っていてもいいから…

この、色のないセカイに唯一居場所を与えてくださった先生。

私にとって、先生は、タイセツな人だから。



………………もう、居場所を失うのは嫌だから………………






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