初雪が降るころに・・・
2章 変化
雪乃視点

次の日、私はなぜか皐月に捕まっていた。

「雪乃?どこ行こうとしてるの?

今日、仕事でしょ?」

いつもの笑顔。

…なにかがおかしい。

「だから行っちゃダメだよ?

雪乃は、俺とだけ、一緒にいればいいから。」

皐月はこんなこと言わない。

「皐月?どうしたの?

なにかおかしい。」

そう聞くと、いつもの…いや、どこか違和感のある笑みでさりげなくはぐらかした。

「どうでもいいでしょ?

ほら、今日はどこにも行っちゃダメ。

俺と一緒にいて。」

グイグイと私の腕を引っ張る皐月。

「……でも、約束したから。」

そう告げた瞬間、皐月の顔が微かに歪んだ。

ほんの一瞬だけだったけれど…

「さ、皐月……?」

「ん?雪乃。なあに?」

おかしい……

「そうだ、雪乃、あの沖田ってやつのとこ行かなくていいでしょ?

だってほとんど無理矢理じゃない。」

「皐月……?

どうしたの?」

なにかに焦ってるの……?



なにをそんなに怯えてるの?



「だからね?雪乃はずっと、俺の側に「はい、ちょっと待ってくださいね?」

突然割り込んできた声。

ふわりと男の人にしては珍しい薄い茶色の髪が風に揺れる。

その髪色はなんとも赤朽葉といういろによく似ていて、なぜか沖田さんにはよく似合っていた。

「お、沖田さん……」

「雪乃さん、あんまり遅いので迎えに来ました。

さて、甘味を食べに行きましょう?」

そう笑って手を差し伸べる沖田さん。

「あ、はい。

皐月、行ってくるから。

あとでね?」

そっと沖田さんの手を取って歩き出す。

「ッ……で……」

皐月がなにかを言った気がした。

だけど、私には聞こえなかった。

気付かなかった。

だからかな?

ゆっくり壊れていくのにさえも気付かなかったの。

私も、皐月も、沖田さんも……


私たちを取り巻く全てが壊れていってしまうことなんて気付きもしなかったの……

















まずは、想いさえも届かない少年からだった。








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