タイガーハート


昼休み。
購買部からの帰り、隼人と二人で体育館の外廊下を歩いていると、
水道の前に見覚えのある姿があった。


『清水くん』

清水。隼人のことだ。

呼び止める声に立ち止まる。

「梨央ちゃん。なーに?」

『今、話せるかな?

小虎くん、清水くん借りてもいい?』

いち早く事態を悟ると、うん、と
うなづく。

二人はそのまま廊下の校舎へ消えていった。




青春ってやつだな…
考えながら空を見る。

すると、後ろから声がした。

『追いかけないの?』



振り返ると、そこにはまっすぐこちらを見つめる伏見の姿があった。

「なんでだよ」

水道の石のふちに腰掛ける。




真似するように、伏見も腰を掛ける。


『小虎って…見かけは怖いし、読めないけど…

優しいよね…』


伏見がつぶやく言葉が、差し込む太陽に溶ける。



「お前は顔は美人なのにガサツだな」

これは、褒めてないか。と思った瞬間


伏見が立ち上がり、水道の蛇口を開いた。
勢い良く水が流れだす。


すると、伏見が蛇口に指を当てた。

更に勢いを増した水がこちらへ噴射される。

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