タイガーハート
前夜祭


準備に追われる日々。
様々な思いが交錯する。

業務的な事でも、何でもよかった。
伏見と関わるきっかけをくれるのは、“文化祭”だけだった。

文化祭の当日が一生来なければいいと思った。
終わってしまったら、最後の繋がりがなくなってしまう。


それでも、前夜祭の日は来てしまった。

今日は吹奏楽部の演奏発表やバンドのステージ、コンテストがメインだ。
皆がそれぞれの準備に取り掛かる。

学校全体が浮足立ち、嵐の前の静けさに校舎全体が包まれる。


俺は、伏見とベストカップルコンテストなるものに出場することになっている。

最終確認の為、早めに集まったクラスメイト。
教室の中、女子グループが至る所でヘアセットをし合っている。

伏見を横目で見る。
伏見は、携帯電話の画面に目を落としている。

綺麗に巻かれた髪の毛が、いつもよりぐっと大人っぽく感じさせる。



時計の針を見ると、14時を回っている。

『小虎!小虎もヘアセットしていいー?』

伏見のグループの女子の元気な声がこちらへ飛んでくる。
声の方へ目線をやると、伏見と目が合う。

少し化粧もして、いつもと雰囲気が違う伏見に、こちらの緊張も高まる。

スタンバイは15時。
時間は差し迫っていた。

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