月下美人が堕ちた朝
20060726am06:12

冷たくなったスバルの頬を、何度も何度も撫でていた。

愛しくて愛しくて、何度も何度もキスをした。

暖かみも、柔らかさも、何もない。

寂しさだけが溢れてくるのに、触れることをやめることはできなかった。

もう一度キスをして顔をあげると、線香の匂いが急に強く鼻孔を刺激した。

それであたしはまた酷い吐気に襲われて、慌ててトイレを探す。

玄関の右に見付け、駆け込んだ。

もう胃液すら出ない。

ただおえつだけが響いて、ドアからノック音と声が聞こえる。

「ちょっと、大丈夫?
あたし。
ツバキよ。
開けて」

お姉さんだ。

ツバキという名前だと、こんな形で知りたくなかった。

あたしは息が荒いまま、乱暴にドアの鍵を外した。

ツバキさんはあたしの背中をさすり、黙ったままだ。

あたしは更におえつが強くなる。

また申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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