月下美人が堕ちた朝
20060725pm07:11

あたしの理解不能な要望を、カズヤは中途半端に叶えた。

頬には優しくキスをしてくれても、唇にはそれをくれなかった。

頬に残る感触が焦れったくて苛々する。

強い口調で理由を聞いたら、哀しい笑顔で彼は言った。

「大切な女性がいる。
アミ以上に」

少しだけ落ち込んでいる自分を嘲笑う。

カズヤに恋人が居たって当たり前なのに。

感傷的な自分に酔って、あたしはまたカズヤを困らせている。

更には、彼の大切な女性すら間接的に傷付けようとしてる。

最低、あたし。

カズヤはあたしをなだめるように話続けた。

「今年の二月から付き合い始めたんだけど、彼女が居るだけで世界が変わったんだ。
そしたら、自分自身まで変われたような気がした。
恋とか愛とか…そういう形にならないものを、俺は昔まで馬鹿にしてたんだ。
実際、恋は脳細胞が起こす錯覚だという学者もいる」
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