明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「それって私の学校の関係者の人ですか?」

「断言はできないけれど、違うと思う。ただ、向こうは自分の正体を名乗らないし、そんな怪しいお金を受け取れない。そんなお金なんてほしくない。あの子の命をお金に換算しようなんて思いたくないもの。裁判がしたいわけでもお金がほしいわけでもないと言っても聞く耳を持ってくれなくてね。そしたら脅迫じみた電話がかかって来たり」

 芽衣の母親は唇を噛んだ。

 正岡に告げ訪ねてくるようになった人。
 ストレートに考えれば学校の人だ。
 だが、そうでなかった場合。


 そう考えて、私は一人のクラスメイトを思い描く。
 きっとそう思ったのは私の彼女に対する先入観だろう。
 あのメンバーでお金を出して解決しようと考えるのは、明香の家しかない。


「来月と言ったけど、今週末には主人と話をして、私だけ引っ越すことになったの。主人は別の場所からしばらく職場に通うと。このことは誰にも言わないでほしいの。もうあの子の命や、生きていた記録に変な人が立ち入ってほしくない」
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