明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
表の顔と裏の顔
 私は靴を脱ぐと、短くため息を吐いた。

 絵里子の存在がクラスからひっそりと消え、優香のことに誰も触れなくなったように。

 明香も絵里子のことには触れず、由紀たちといつも通りの日々を過ごしているようには見える。

 私はあの携帯を見てから、芽衣のことを今まで以上に考えるようになった。

 彼女はどんな気持ちで日々を過ごしてきたのだろう。
 最後の日に、なぜあんなメールを送ってきたのだろう。
 彼女はいつでも学校から逃げ出せたはずだったのだ。


 教室の扉を開けると、人だかりが教卓に出来ていたのだ。
 教室内で、よりにもよって教卓に人が集まるなど、今までだと考えられなかったのだ。

 私は教卓に直行すると、集まりの端にいた遠藤君に声をかけた。

「何かあったの?」

 彼は苦笑いを浮かべていた。

「正岡だよ。あいつよくやるな」
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